見つけた 犬としあわせ

こころがどきどきするもの見つけたとき、それを作品にしたり、思わずなにかの形にして人に伝えたくなります。 見つけたとき感じたしあわせ感覚がひとしずくでも誰かに伝わったら、ダブルでハッピーです。

2007/03/12

パフュームとオドラマ


見ようと思っていたわけじゃなく、偶然「パフューム」という映画を見ました。「ラン・ローラ・ラン」の監督だからつまらなくはないだろう、くらいのノリだった。ところが、とにかく冒頭から強烈な臭気に圧倒されるオドラマ(臭いのする)ばりの映像に時に嗅ぎたくなくて息を止めながら見入りました。主人公の殺人者は、魚市場の魚のアラだらけの溜めに産み落とされる生まれ方からして異常な、誰からも愛されるはずもないような男でした。彼にはまったく臭いがなかったからか、人に極端に接近しても気づかれないし、セントバーナードでさえ気づかない。
そして18世紀のパリはこうだったのか!まちのイメージはとても強烈です。
殺害した女性を蒸留機に入れてその香りを抽出したエキスにどれほどの誘惑があるのかよくわからないまでも、ある時間内、どんな人間をも愛に目覚めさせ、他人と融和させて、まどろませるという誘惑は、アメリカ人のやってる寛容ゼロ政策や互いを憎み合わせてことを成就しようという侵略のあり方など、いまの世の中へのリアクションとして見れば大いに理解が得られるような気がしました。
オドラマと言えば、うんと昔に1年だけ住んだニューヨークのヴィレッジの、深紅のカーテンを開けて入って行くちょっといかがわしい雰囲気の映画館で、ジョン・ウォーターズ監督の1981年の作品「ポリエステル」を見ました。画面にマークが点滅すると手渡されたオドラマカードのその番号の丸印をこすって臭いを嗅ぎながら見るという体験はとっても愉しかったことを憶えています。臭いはすぐに混ざってしまい、どれを嗅いでもおんなじ臭いしかしないのですが。映画「パフューム」のなかで香水調合師のダスティ・ホフマンが混じることにとても神経質になっていたことがうなづけます。彼の鼻を持ってきたところにセンスを感じます。
映画「ポリエステル」は、臭いの出る映画「オドラマ」として話題になったのでしたが、80年代という家族が見直される時代背景を頭に入れてみるといっそう楽しめる映画でもありました。映画は郊外の中流家庭の普通の人々のドラマです。といってもジョン・ウォーターズの半端でない視点で描かれます。ディヴァインが郊外の貞淑な主婦の役を怪演していることにも注目です。
夫は街のポルノ映画館の経営者。郊外のコミュニティでポルノ反対運動が起こり、ディヴァイン一家の家には近隣の住民たちで結成される抗議のデモ隊とTVニュースの取材陣が押しかけます。ふたりの子供のうち姉のほうはヒップな男を追いかけて遊び歩くうち妊娠してることが判明します。弟は強度のハイヒール・フェチで、イカしたハイヒールを履く女性のつまさきを思い切り踏みつけることを至上の喜びとしています。そのため、警察から追われるはめになります。最悪を極めた情況のなかで主婦ディヴァインはキッチンドランカーとなりノイローゼになってしまいます。そして映画の最後でなんとか子供たちとの絆を取り戻すときディヴァイン・ママが感極まって漏らす言葉が、「普通って難しいことじゃないのね」なのでした。80年代に入り、世の中は平凡で普通の人々であることをよしとする傾向が強まっていました。ウォーターズの他の作品同様に、この映画もまた、郊外の日常は決して普通ではないことを描いています。バッドテイストたっぷりのウォーターズ作品でした。
インディーズの常連だったウォーターズは、この後、1987年の作品「ヘアスプレー」でメジャー進出を果たします。

上の写真は、マーク・ジェイコブズのTシャツです。「アル・ゴアがわたしたちを救ってくれる」とあります。これ、わくわく、欲しいな!と思いました。