見つけた 犬としあわせ

こころがどきどきするもの見つけたとき、それを作品にしたり、思わずなにかの形にして人に伝えたくなります。 見つけたとき感じたしあわせ感覚がひとしずくでも誰かに伝わったら、ダブルでハッピーです。

2007/09/22

ホワイトツリーとジーナ6


ジーナ高校の6人の黒人生徒の解放を求めて9月20日、全米各地の活動家たちがルイジアナ州の小さな町に結集しました。事件を担当するリード・ウォルターズ地方検事も沈黙を破り、6人を起訴したことの正当性を公に訴え出ました。
具体的にはジーナ町立高校の白人生徒に対する黒人生徒6人の暴行をどう裁くかという問題で、当初「第二級殺人未遂」だったのが、公判中に「第二級暴行傷害およびその共謀」に下げられたものの、まだ「厳しすぎる」というので大きな問題になっています。実はこの町に渦巻く人種をめぐって対立するエネルギーには事件の布石となるルーツがありました。
白人が約80%、黒人が15%というような人種構成の、小さな町ジーナの町立高校には悪しき伝統がありました。「ホワイトツリー」と呼ばれる校庭の大きな木の下で集えるのは白人生徒に限られるという暗黙の「了解」です。
ことの発端は2006年8月末、黒人の新入生が校長に、自分も「ホワイトツリー」の下にすわっていいのかと尋ねたところ、校長は「君たちは誰でも好きなところに座っていいんだ」と答えました。このやりとりを聞いて、質問した生徒を含む何人かの黒人生徒が「ホワイトツリー」の下に座るという行動に出ました。すると翌朝、「ホワイトツリー」に首をつるための「ロープの輪がぶらさがっている」のが発見されました。
ほどなく3人の白人生徒の仕業であることが判明し、校長はこの3名の放校処分を決めました。ところが、教育委員会が介入して「思春期にはよくあるイタズラで、誰かを脅すような性格の行為ではない」と断じ、校長の決めた放校処分を破棄して「停学処分」に減刑したのです。教育委員会の決定の際のコメントが人種対立を燃え上がらせる要因になったと言われています。
ルイジアナ州を含む南部では「木にロープをぶら下げる」というのには象徴的な意味がありました。長い間存続した奴隷制度において、見せしめのために奴隷を殺害するのにこれが使われてきたこと、そして奴隷解放後も「白人の優位」を見せつけるのに黒人を迫害し続けたKKKのような白人至上主義団体が黒人をリンチするのに木のロープにつるしてきた記憶が深く残っているからでした。
黒人から見れば教育委員会が決めつけたことはウソでした、「ホワイツリー」に下がったロープは明らかに「おまえをリンチにしてやる」と人を脅す行為でした。その犯人たちが「停学」で済んだとなれば、人種問題の怒りのエネルギーが蓄積されていっても不思議ないことです。
問題の「ホワイトツリー」は切り倒されて「薪」にされたそうですが、この事件以降、ジーナでは高校生同士の人種の対立が激しくなりました。そんな中で起きたのが、冒頭にある今回の傷害事件でした。
有罪になると禁固20年という厳罰が待っていることから激しい反発が続いています。
ルイジアナ法には、「第二級暴行傷害」を立件するには「生命を脅かすような凶器の使用」という条件があるのでしたが、今回の公判では「黒人高校生たちがはいていたテニスシューズ」が「凶器」であるとされている点も問題になっています。白人が銃で威嚇しても「おとがめなし」なのに、黒人がテニスシューズをはいていただけで「第二級傷害」というのでは、差別といわれても仕方ありません。
さて、この黒人生徒6人は「ジーナ・シックス」という名で呼ばれ、人種差別の犠牲者ということで、全米からバスを連ねてデモ隊が集結することになりました。
こうした事件では必ず先頭にたってきたジェシー・ジャクソン師やアル・シャープトン師がジーナに来て陣頭指揮にあたっています。「南部的司法」から「ジーナ・シックス」を救出するために連邦議会が行動すべき!というスローガンを叫びながら、デモ行進はジーナの裁判所を取り囲みました。
もちろん、民主党の大統領候補たちはそれぞれにコメントを出しています。ヒラリー・クリントンは「司法システムの機能不全」という言い方で、ジョン・エドワーズは「人種隔離という環境で育ったわれわれ南部人にはみな、こうした人種問題に責任がある」と言って、「ジーナ・シックス」への減刑運動への支持を表明しました。
ここでオバマだけがちょっと違っています。彼はこれまでの主張、「人種間の和解」ということをこの問題でも訴えかけます。黒人側が渋々でも納得するような「裁定」が出れば、今度は白人側に怨念が残ることになる。オバマは、そうした怨念の応酬を止めさせたいという姿勢で発言してきています。 
全米から押し寄せた抗議者によって包囲された裁判所は、72時間以内にこの問題に関する公聴会を開く命令を出して、とりあえずその場を収拾させました。しかし、町は依然として人種間の刺刺しいムードにあり、来週の公聴会をめぐってはさらに緊張が高まることも予想されます。

写真は、すでに伐られて存在しませんが、校庭にあった問題の「ホワイトツリー」です。