見つけた 犬としあわせ

こころがどきどきするもの見つけたとき、それを作品にしたり、思わずなにかの形にして人に伝えたくなります。 見つけたとき感じたしあわせ感覚がひとしずくでも誰かに伝わったら、ダブルでハッピーです。

2007/11/27

オサマはレンディションされた?


2005年2月14日付ニューヨーカー誌に「Outsourcing Torture」の記事が掲載された。ニューヨーカー誌といえば勇気あるスクープをいくつも書いてきたシーモア・ハーシュ記者の名が浮かび、政権に媚びない一目置かれる存在だ。「拷問を他国に請け負わせる」、それもシリアのようなアメリカが公然と敵として非難してきた拷問が日常的に行われている国に「外注に出す」というべらぼうなことをアメリカはやっている。
問題のある国に外注に出す際に、容疑者を積んだジェット機が途中ヨーロッパの国々を経由することもあってヨーロッパで問題になっている。最近全米で封切りになった映画「レンディション」は現実に起きてることからインスピレーションを得ている。映画で起きてるようなこと、突然家族が消えたときには、特に中東系やイスラム教徒は、こういうことも疑ってみなくてはならないところまできている。
ちなみに、ニューヨーカー誌の記事はここにあります。
http://www.newyorker.com/archive/2005/02/14/050214fa_fact6

◇CIAが現在行っているエクストラオーディナリー・レンディションという「拷問のアウトソーシング」について:
911のテロ以降、CIAはテロリストと疑わしき人物を逮捕状などの法的手続きなしに拘束し、秘密の自家用ジェット機で誘拐して、米国内、ヨーロッパ、アジア、アフリカに作られた秘密の刑務所をたらい回しにした後、拷問施設に送り込む。
拷問を請け負うのはシリア、エジプト、アフガニスタン、サウジアラビアなど、当局による容疑者の拷問が黙認されている国だ。
これはまったく違法で極秘の作戦なので、拉致誘拐された人物はある日突然「行方不明」になる。
表向きアメリカは拷問に関与してないことになっているので、CIAは請負先の当局者に質問事項リストだけを渡して容疑者を引き渡す。
どれほどの人間がレンディションされたかは不明だが、EUの調査によると2001年から2006年の5年間にCIAによる拉致誘拐によってヨーロッパで100人以上が行方不明になっているらしい。
ヨーロッパ各国は抗議していたが、アメリカは事実関係を認めていない。
ところが、カナダ、ドイツなどの国籍を持つイスラム教徒が拷問された後に無実とわかって釈放された。彼らがアメリカ政府を相手に集団訴訟を起そうとしている。
拷問や捕虜虐待の事実が暴かれた際、「アメリカが拷問したら敵と同じになってしまう。戦争の大義がなくなる」とマケイン上院議員が議会でブッシュ政権を批難した。ブッシュはしかたなく「アメリカは拷問をしない」と声明をする羽目になったが、外国で行われる「外注」の拷問は今も続いている。
チェイニー副大統領は拷問について「(対テロ戦争では)こちらもダークサイドに入る必要がある」と拷問の事実を暗に認めた。ライス国務長官は「CIAのミス」とだけ言って、無実の人間を拉致拷問した事実を認めた。
(「ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記」から抜粋)

◇カーレド・エル・マスリ、モアザム・ベッグ、ビンヤン・モハマド、マハル・アラル——。彼らの名は、多くの人にとって聞き覚えのない名前かもしれない。彼らはテロ組織に何のつながりもないのに1997年以降、拉致された人々だ。映画「レンディション」同様、搭乗ゲートや飛行機の乗り換え途中で拘束されたり、街中から拉致されている。テロとの関連を疑われて拘束された人々は、尋問と拷問が果てしなく続く「秘密の世界」に消えていった。全員がCIAの保護下に移されたのだ。
調査ジャーナリストのスティーブン・グレイは著書「まぼろしの飛行機:CIA拷問計画の実話(Ghost Plane: The True Story of the CIA Torture Program )」の中で、「エクストラオーディナリー・レンディション(特別移送)」というCIAの拷問作戦や、この作戦を実行するジェット機について書いた。
以下は、本の宣伝でニューヨークを訪れたスティーブン・グレイに市民記者のクリストファー・ブラウンがインタヴューした投稿記事の抜粋だ。

→あなたが海外移送計画を知った経緯を教えてください。
SG:私は当時、英サンデー・タイムズ紙で働いていて、2001年9月11日の米同時多発テロの直後、ワシントンにいました。米議会の情報委員会委員長、後にCIA長官になるポーター・ゴスの事務所にいて、ゴス氏が初めて「移送」という言葉を使ったのです。オサマ・ビンラディンを捕まえるのにCIAが何をしてきたかを聞くなかで、彼は「ビンラディンは誘拐されたのではないか」と言いました。それは「移送と言うんだ。聞いたことないか?」とゴス氏に聞かれ、私が知らないと答えると、「一種の裁き」だと言われました。

→多くの米国人は、この「移送政策」というものがテロリストを捕まえるための新種の武器だと思っているようですが。実際にはもう何年も前から使われてきているんですよね。これについて教えてください。
SG:移送そのものは、基本的には裁判や司法手続きを必要とせずに容疑者をほかの国に送ることで、1880年代から実施されてきました。でも注目すべき点は、この移送は米国で裁きを受けさせるために米国以外の国から人を連れてくることでした。公開裁判、つまり裁判官と陪審員の前に連れてくるわけです。違法行為があったのは外国でも、移送そのものは米国では合法とされています。長い間これが実行されてきました。
でも私が本で書いたのは「特別移送」という作戦についてです。クリントン時代の1990年代、特に1995年ごろから、イスラム教テロリストの容疑者とされた人物を対象に組織的に行われるようになりました。その後ずっと続いています。クリントン時代に始まったわけですが、拡大されるようになったのは米同時多発テロ以降です。

→本にカナダ人のマハル・アラルのことがあります。米政府はアラルをシリアに送った。その前に米当局によって長いこと尋問も受けていた。アラルはシリアに送られると知って、拷問されることがわかっていたので米の要員に送らないでくれと頼んだそうですね。ブッシュ政権は拷問はないと繰り返す。でも実際にはシリア、エジプト、ウズベキスタンなどの国に送っているということで、拷問をアウトソーシングしているといえます。さらに、米国はイラクのアブグレイブ刑務所の例のように拷問を含む尋問に直接かかわっていた。これに関してどう思いますか。
SG:米国の基本的な問題は、拷問が法律で禁止されていて、誰も直接関与できない点でした。ほかの国に送る体制があれば、米国の要員には行えないような尋問ができることになります。ご存じのように、ブッシュ大統領は最初に移送問題に言及したとき、「拷問をするような国に人を送ったりはしない」と言いました。この発言は修正する必要がありました。弁護士が実際には米国が拷問を行っている点を指摘したからです。
「特別移送」は人を街中で捕まえて危険な状況におくというだけではありません。例えばアラルの場合ですがカナダに送還することもできた。実際彼はカナダに戻る途中でした。でも米政府は当局が「適切」と考える尋問を行う国に送ることを故意に選択したわけです。シリアはアラルなど欲しくはなかった。シリアは彼に何の関心もなかった。いくつもの質問事項のリストに、米国やカナダにもたらした脅威についてはあっても、シリアに関するものはなかった。これによってアラルの事件がアウトソーシングの明確な実例だというのがわかります。米当局は自国のためにほかの国に汚い仕事をさせているのです。

→海外移送の飛行機のパイロットに米連邦航空局の偽造IDとライセンスが発行されていたと本にありますが。
SG:偽造書類や偽名を使っているのを多くの政府当局者が知っていたにもかかわらず、パイロットが世界中を飛び回れたのには驚きです。連邦航空局が関与し、偽造免許証を発行する連邦事務所が関与し、サンノゼにある民間企業が関与していた。ボーイング社の大きな子会社でジェファーソン・データ・プラン社というのがあります。世界中で個人向けの飛行を請け負う民間企業です。この会社が移送を含む飛行をアレンジし、CIAと直に動いています。ニューヨーカー誌に興味深いインタヴューが掲載されていて、以前この会社で働いていた人物が「飛行機が拷問のアウトソーシングに使われていたことを会社側は知っていた」と言っています。多くの人が何が起きていたかを知っていて、正しいことなのか間違っていることなのかを判断するのは誰かほかの人の仕事だと全員が思っていたのです。

→CIAはアラルを間違えて捕まえたことを認めています。これについて話してください。
SG:CIAは疑わしい人物を捕まえて処理するわけですが。どうも無謀さがあったようです。たとえばドイツ人のカーレド・エル・マスリですが、CIAは彼を別人と勘違いして拘束しました。彼の証言によると、カーレド・エル・マスリは独房で5カ月間拘束されています。彼の存在は独房の中で忘れられてしまう、つまり真実を見つけ出すのに彼はそれほど重要な人物とは見なされていなかったのです。
同様に、アラルは信用度が薄い証拠を基に尋問を受けています。現時点でアラルは無罪になりました。カナダの公式な調査でテロとはまったく関係ない人物とされました。秘密の拘束や秘密の情報が存在してこの情報を弁護士が裁判所で検証する機会が存在しないために無実の人を拘束し虐待する体制ができるのがわかります。拘束を検証するような「安全弁」として働く仕組みがないのです。

→アラルはカナダ政府から補償と公式謝罪を受けましたね。
SG:補償金を受け取り、警察のトップが辞職、政府が謝罪しました。カナダ政府はアラルをシリアに送るという決定に何の役割も果たしていないと言うべきでした。間違った秘密情報を持ち、これを米国に提供していたとしても、拷問のために彼をシリアに移送しようと決めたのは米国です。
米国は拷問に反対で、拷問を禁止するありとあらゆる種類の法律があり、拷問を実行する人は訴追されると米政府は公然と言い続けます。でもびっくり仰天することに、アラルが米国内で訴えを起こす道はないのです。彼は米国で裁判を起こそうとしましたが、そうなれば国家の機密漏えいになりかねないという米当局の判断で実現しませんでした。つまり、これの犠牲者が法廷で最終的に正義の決着をつける道はないということです。
(オーマイニュースUSA2007年5月28日)

写真は、拷問のアウトソーシングの犠牲者のひとり、カナダ人のマハル・アラル氏