見つけた 犬としあわせ

こころがどきどきするもの見つけたとき、それを作品にしたり、思わずなにかの形にして人に伝えたくなります。 見つけたとき感じたしあわせ感覚がひとしずくでも誰かに伝わったら、ダブルでハッピーです。

2009/01/27

ハマスの兵器はどこから来る


イスラエルの標的のひとつとされるカッサムロケット弾はハマス製造らしいが、今回あまりにも不釣り合いな戦力に抵抗するのにハマスが使ったのはカッサムの4倍の飛距離を有する中国製のロケット砲だったと、wired visionが伝えている。

イスラエルの封鎖でガザの人びとが頼るのは「命綱のトンネル網」、あれだけ立派なアメリカ製兵器(新型バンカーバスター)で叩かれたのに、命がけの復旧作業で1月27日再開された。
写真はさっそく運ばれるヤギ、生活必需品の他にもiPod、バイアグラまで運ばれるそうだ。(写真wired vision)

日本人にも若手のこんなジャーナリストがいる。以下は彼が書いた本の推薦文からーー。
「ロシア 語られない戦争—チェチェンゲリラ従軍記」常岡浩介著
暗殺された元FSB中佐アレクサンドル・リトビネンコの盟友によるルポルタージュ。東洋人でありながら、ロシアから「テロリスト」扱いを受けている彼は、暗殺の対象となっている可能性もある。そんな自身の危険を顧みず、ロシア秘密警察による拘束などの実体験をもとに、同国の闇を暴く。
政府側の発表でしか語られないチェチェン戦争の内幕、プーチン政権に対抗するジャーナリスト、政治家たちの不審な死とFSBの関係や実態、メドベージェフ政権の今後と充実した内容だ。

イスラム教徒のジャーナリスト、常岡浩介のブログ「さるさる日記ーThe Chicken Reports」は、1月22日ガザに入った彼の目に映る実態を伝えます。全文は下記のブログからお読みください。彼は、朝日ニュースター「ニュースの深層」で電話によるガザ報告をやっている。
http://www2.diary.ne.jp/user/61383/

◇1月23日
昨日の夜、ガザ地区内に入って、車の中で嗅いだいやな臭いは死臭でした。
中心都市のガザ市でも、今現在、市の半分が全く電気がないままで、昨日、ラファからガザまで車で走る途中の大半は真っ暗でした。
ガザは2000年以来2回目、パレスチナは3回目ですが、今回の攻撃は今までの2回とは桁が違うデタラメさです。今までイスラエル軍というのは、国際社会の批判を回避しようと、いろいろ手を尽くして「人道的」であるように装っていたと思うのです。今回も、彼らなりの努力の跡は認めます。たとえば、空爆前に目標の家屋にわざわざ電話をかけて、住人に非難を促したり。しかし、そういう取り繕いをもってしても、今回の攻撃のデタラメさを人道的に装うことは無理だったようです。モスクも病院もむちゃくちゃに破壊されていましたし、国連施設も壊されていました。病院は女性や子どもの被害者で溢れています。
今日数時間、取材で回っただけで、まだほとんど観ることができていませんが、仰天の連続です。
イスラエルは、「ハマスを弱体化させた」としていますが、どうもまったくそうではないようです。ハマスは大して傷つかず、無関係の市民ばかりが殺されています。イスラエルが「武器密輸トンネル」と呼んでいるのは、その用途の大半は武器の運搬ではなく、イスラエルのガザ封鎖によって欠乏した生活物資の運搬なんですよね。何年にもわたってイスラエルがガザを兵糧攻めにしたにも関わらず、ガザの市民生活が破綻寸前のままギリギリ持ちこたえたのはトンネルからの物資があったからです。
◇1月24日
今日、イスラエルがエレズ検問所を報道関係者に開放し、一気に150人ものジャーナリストがガザ入りしました。おかげで賑やかになりました。
今日は地上部隊が侵攻したガザ市東部、ゼイトゥーン地区、ジャバリア地区などを見て回りました。
昨日見たのはオフィス・官庁街でしたが、こちらは郊外で、市民の生活圏です。
昨日の日記で、イスラエルはハマスの弱体化に成功していない、と書いたところですが、今日は全く次元の違う事実に気づきました。
イスラエルはそもそも、ハマスの弱体化など目指してはいなかったのです。
ゼイトゥーン地区でも東部でも、侵攻した地上部隊は、初めから、そこにハマスがいるかどうかを捜索しさえしませんでした。
彼らはただ、民家であるとか、店であるとか、工場であるとかの別に全く構わず、目に付くものすべてを丁寧に破壊しながら進んでいました。アイスクリーム工場も跡形もなくなっていましたし、製粉場もばらばらでした。
誰が住んでいるかにも全く構わず、民家は破壊され、わざわざ丁寧に破壊した跡に土をかけて埋めたりもしていました。
果樹園の木々を、丹念に一本一本切り倒して、農場をブルドーザーで破壊したりしていました。もちろん、軍事的な意味などないはずです。モスクを破壊した跡には落書きが残されていました。
過去2回の取材で、イスラエル軍という組織は感情のない、システマチックな組織ではないかと感じていました。すべての行動が合理的で、無駄がないようにみえたのです。しかし、今回のイスラエル軍は明らかに、無駄としかみえない行動をむやみにしています。というより、作戦目的が全くみえません。去年12月下旬の最初の空爆については、治安・防衛・警察関係の施設を一気に破壊するというスタイルで、傍目にも目的がよく分かりました。しかし、地上戦は作戦自体、全く無意味な破壊行動に徹しています。
市民を拘束して下着だけにして並べて座らせ、脅迫した、などの証言もありましたし、兵士たちが民家に入ってきて、屋内の家具を楽しみで破壊して回ったという証言もありました。
どうやら彼らは、ハマスになど関心がなかったようなのです。
◇1月25日
イスラエルがそもそもハマスの弱体化など目指していなかったのでは、というぼく自身の疑念は、ますます強くなっています。今日は空爆で破壊されたガザ・イスラム大学を訪ねましたが、学長も同じ意見でした。しかし、「では、本当の作戦目的は?」となると、どうも納得できるコメントが聴けません。「ガザ市民の生活基盤破壊が目的だ」という人が多く、実際、ガザ市民の生活基盤は壊滅させられているのですが、なんのために生活基盤を破壊したのか、やっぱり分かりません。見た感じはヘイトクライムみたいですが、国家レベルでヘイトクライムをやってなんになるのか?あるいは、産経新聞が書いていたように、自分たちへの憎悪を煽って市民のハマス支持を強め、ファタハとの分断を深めて、パレスチナ全体をより混迷させたいというのも考えられると思いますが、それってイスラエルの利益になると確信できるのでしょうか?
謎ばかり深まります。教えてえらいひと!
◇1月27日
ガザでエジプトの話をするのもなんですが、ガザの人たちのエジプトに対する感情はひどく悪いです。イスラエルの攻撃の中、国境へ逃げてきた一般市民をエジプト当局は救助するどころか、銃を向けて追い払ったのです。
そもそも、ここ何年も続いているイスラエルのガザ封鎖はエジプトの全面的な協力があって初めて成立しました。つまり、ラファの国境をエジプトが完全閉鎖したので、ガザ市民は飢えと欠乏に苦しんだのです。
エジプトに越境できたパレスチナ人は救急車に乗った重傷者か、秘密トンネルをくぐり抜けた密入国者だけでしたが、イスラエル人の方はその頃、タバの国境から歓迎されつつエジプトに入国し、ダハブだのシャルムシェイクだのといったリゾート地で観光を楽しんでいたのです。
もちろん、そんな矛盾はエジプト国民にも分かっており、新聞には「軍隊はどこだ?」「青年たちはガザへ国軍を送れと要求」などといった見出しが躍っていました。ラファに近いアリーシュの金曜デモでは、数十人のデモ隊を数百人の盾と棍棒、銃で武装した警官隊ががっちり取り囲んでいました。
つまり、エジプト当局はどこか外国の軍隊だとか、パレスチナ人だとかではなく、自国民を恐れ、暴動を警戒しているのです。
ハマスの出身母体「ムスリム同胞団」はエジプトで非合法ですが、もし、民主的で自由な選挙があったら、間違いなく与党となるであろうといわれています。ハマス支配のガザがエジプトの同胞団を刺激し、エジプトの貧困と停滞の元凶といわれる、腐敗したムバラク独裁政権を打倒することを、彼らは恐れているのです。
そんなしょうもないエジプトに、明日はガザから戻ろうと思います。

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