見つけた 犬としあわせ

こころがどきどきするもの見つけたとき、それを作品にしたり、思わずなにかの形にして人に伝えたくなります。 見つけたとき感じたしあわせ感覚がひとしずくでも誰かに伝わったら、ダブルでハッピーです。

2009/10/05

イングーシの顔



◇イングーシの一連の暴力によるおどし

ロシア北コーカサス地方の主にイスラム教の小さな共和国イングーシでは政治的な暴力によるおどしと殺しが毎日のできごとであるようだ、そこはチェチェンと国境を共有する。Dom Rotheroeがなぜかを説明する。

「母には彼が死ぬ前に拷問されたことに触れないで」と私たちが彼の家族にインタヴューする前に故Batyr Albakovの姉妹のひとりがささやく。
「母はそのことを知らないし、心臓が弱ってきています。」

彼らは7月10日の午前にやって来て、Albakovかあさんの息子を運び去った。車輌2台分の治安部隊がロシアのコーカサス地方イングーシ共和国の家族の住居に押しかけていた。

その11日後、Batyrの家族はインターネットの報道で彼の死を知った。

当時、26歳の飛行機エンジニアはイスラムの戦闘的な活動家になり、銃とカモフラージュ装備を身につけて治安部隊との銃撃戦で殺されたことになっていた。

・毎日の暴力によるおどし

Batyrの母が部屋から出て行くとすぐにこれがウソだと立証される、そして彼の兄弟分たちが母親には教えられないケータイ写真を私たちに見せる。

彼らの兄弟の死体の写真は銃撃戦ではまず負わせられない、多彩な血腫、ナイフの傷、肩で切断されたも同然の腕など、おびただしい数の陰惨な損傷を明らかにする。

そのようなできごとがイングーシではほとんど毎日起こる。ロシアから独立するチェチェンの2つの戦争の間に30万の住民を有する領土はチェチェンと国境を共有するために苦しんできている。

ロシアが結局チェチェンを管理した後、過激派反逆者たちは北コーカサスのイスラム首長国を宣言してイングーシのように主にイスラム教のロシアの他の共和国に戦いを広げた。

彼らのジハード(聖戦)イデオロギーは一般の全住民の共感をあまり見いだしてきていない。

Albakov家から数マイル道路を下った私たちは、また別の深く悲しむ家族に会う。

何日か前に姉妹のふたりが道端のキオスクで戦闘的な活動家によって射殺された。

・「まやかし」の攻撃

たぶん二人がアルコールを売っていたからだった、保守的だが世俗的なイングーシではそれは犯罪ではない。

さらに、Albakov家のように、殺された姉妹の家族は、決定的責任をロシアとイングーシ当局とその治安部隊に課す。

これらの機関が戦闘的な活動家ばかりか多くの罪のない人々に断固たる措置(弾圧)を取ってきている状態が、彼らを反政府分子の完全なる新兵補充員にしてきている。

Batyr Albakovの妹、リサはそれを統計値のせいにする。治安部隊は積極的に戦闘的な活動家と戦っているのを示さなければならないと彼女は言う。

だが、一般市民をひっとらえて戦闘員の死体に見せるのは、森に入っていって積極的に聖戦する人たちと戦うよりはるかに簡単だ。

ここの人たちはロシア当局がしてきたことで唯一よいことは、昨年イングーシのひどく嫌われたジャジコフ大統領を人気のあるユヌス=ベク・エフクロフに取り替えたことだと考えるようだ。

エフクロフ氏は先の政権の腐敗をきびしく取り締まって戦闘的な活動家たちと会談を始めた。さらに今年6月彼は、彼のクルマへの自爆攻撃で殺されかけた。

あれからずっと、戦闘的な活動家に対する戦いはまったく増してきている、だがもちろん、治安部隊による一般市民に対する暴力の脅威はある。

今年これまでに、2008年全体の死者と同数の、200人以上が殺されてきている。

ますます若い男性が反逆者の仲間に加わることで知られる「奥地(逃げて隠れる)」に入っている。

ある者は宗教的信念からそうする、けれども、人権NGO「Mashr」のMagomed Mutsolgovは、少なくとも80%が復讐のために家を出ると考える。

Mashrの事務所は174人の写真が並べられたボードに威圧される、なかにはMagomedの弟の写真も含まれる、彼はこの7年間、跡形もなく失踪してきている。

彼らの大多数は治安部隊によって誘拐されたとMagomedは言う。

ボードにない他の500件の誘拐と殺人の事例では、ただひとりの治安部隊の隊員も裁判所の前に出廷させられてきていない。

・「正義はない」

法も正義もないというのが、イングーシの至るところで私たちが耳にする不平だ。

血の復讐がいわば男の名誉である社会では、死去した者の若い男性親族は彼ら自身の正義を求めなければならない。

銃を得て復讐するために彼らは奥地へと向かう。そして過激派といる間に、彼らのイデオロギーはしかるべくシフトするかもしれない。

ある者は、この夏、北コーカサスが再燃に遭遇してきている、21人を殺害し100人以上を負傷させた8月のイングーシの主要警察署への攻撃で最高潮に達する自爆犯になるかもしれない。

Albakov一家で私の最も強烈な記憶は、Batyrの一番下の弟ベスランに関するものだ。

ベスランは血の復讐を拒絶して、兄のために決して来ないとわかっている法的正義を期待する。

また、復讐を求めることで治安部隊が彼を怪しむことになって、いつでも彼の所に来るかもしれないのを彼はわかっている。

彼の地味に自暴自棄の顔は、戦闘的な活動家の岩やきつい場所と、かつてなく増える一連の暴力の脅威を与えることに余念がなく思える当局とのあいだに追い込まれた今日のイングーシの顔だ。

(BBC 03 October 2009)

写真は、故Batyr Albakovの姉妹たち