見つけた 犬としあわせ

こころがどきどきするもの見つけたとき、それを作品にしたり、思わずなにかの形にして人に伝えたくなります。 見つけたとき感じたしあわせ感覚がひとしずくでも誰かに伝わったら、ダブルでハッピーです。

2013/10/26

日本を萎縮させる発想

◇日本の秘密法案は、報道の自由、知る権利について恐怖をかきたてる
ロイター通信 25 October 2013
by Linda Sieg and Kiyoshi Takenaka

日本の首相、安倍晋三の内閣は、中国との緊張や福島原発の危機が入る広範囲にわたる問題について国民の情報へのアクセスを奪うことができると批判者らが言う、国家秘密法を立案している。

この新法は当局の秘密の定義を劇的に拡大して、有罪判決を下されたジャーナリストは最高5年の刑でムショにぶち込まれる可能性があった。

日本の第二次世界大戦前とその間の苛酷な秘密主義支配体制は長いことそのような法律をタブーとしてきた、しかし昨年12月に安倍が政権を握った時から自公連立が衆参両議院で安定多数を確保し、野党が混乱しているうえは、この新法が制定されるのは確実に見える。

より強力な軍隊と謝罪の色合いが少ない日本の戦時史を書き直すことを含め、いわば保守の優先課題であるアメリカが立案した日本の戦後憲法を市民権に関して市民の務めを強調するよう見直す安倍の意欲と新法とのあいだに批判者らは同等の目的を見いだす。

「主流派政治勢力による国民に対する大支配の強要がある」と明治大学のローレンス・レペタ法律学教授は言っている。「これは、内緒で実行することに国には広範囲の権限があってしかるべきとの考えに一致する。」

安全保障政策を監督して省庁間で調査するためにアメリカ流の国家安全保障会議を設立する彼の計画に、金曜に閣議決定されることになっている新法がきわめて重大だと安倍は述べる。

秘密をリークするか秘密を手に入れようとする人に苛酷な罰則を科す法案はあまりにも広範囲で曖昧すぎ、何が保護される項目に入るのか予測できなくすると法律とメディアの専門家は言う。独立した検査プロセスがないのは濫用について広い自由裁量を残すと彼らは言う。

「基本的にこの法案は国民が知らされるべきことについて情報が永遠に秘密にしておかれる可能性を高める」と日弁連法案対策委員会メンバー、むとうただあき弁護士はロイターに告げた。

「法案の保護の下、行政部門は自由裁量で秘密にしておかれる情報の範囲を決めることができる。」

法律は、2011年福島原発大災害に至った監視機関と公益企業間の談合を含める当局の悪事と大失態を調査するジャーナリストの能力をひどく妨げるものだとメディア監視者らは恐れる。

監視機関と原子力産業間の共謀が、2011年3月津波に襲われた東京電力(Tepco)の福島原発でのメルトダウンを防げなかった基本的要因だったと議会の独立調査団による調査が突きとめた。そして政府と公益企業は進行中の危機の手際のせいで批判の焦点のままである。

東電は危機に関する情報を隠すことでよく非難されてきており、詳細の多くが新聞雑誌で最初に明らかになった。7月、メディアが報じ、公益企業が否定した数カ月後に、ついに東電は放射能汚染水の太平洋への大規模な漏れを認めた。

恐ろしい影響

「福島の大災害および原子力の必要性またはそのどちらか一方に関する誤った国の行状の隠蔽、これがまさしく安倍の本当の意図かもしれない」と上智大学政治学教授、中野孝一は言っている。お目付役の働きをするメディアの手腕へのあからさまな影響を法律専門家は畏怖する。「法律には日本のジャーナリズムへの恐ろしい影響があることは非常に明白に思える」と明治大学レペタ教授は言った。

批判者らは、自民党の下位の連立パートナー、公明党の強要で法案に加わった報道の自由と知る権利の論及の追加を、政治的ごまかし(体裁づくり)と退けている。

自民党は以前そのような国家機密法を制定しようとして不首尾に終わっているが、2010年東シナ海の尖閣諸島近くの中国漁船と日本の警備船との衝突を暴露するヴィデオを日本の沿岸警備隊当局者がオンラインに投稿したあと、勢いが更新された。現野党の民主党によって率いられる当時の政府は、日中関係の緊張をあおることを恐れてヴィデオを隠しておきたかった。

沿岸警備隊当局者は一年の停職にされたが、職を辞した。彼はどんな犯罪でも起訴されなかった。

新しい法律は機密にされるべき"特別秘密"について、防衛、外交、テロ対応、対抗的スパイ活動(防諜)と4つのカテゴリーを創設する。

現在の国防当局だけというよりはむしろ、全省のトップの役人が5年間国家秘密に指定することができるようになる、30年後に内閣の承認が義務づけられるとはいえ、5年きざみで、場合によっては無期限に更新できる。

「このままでは、何が国家秘密の構成要素になるか決めるにあたり国はだいたい行動の自由を得るし、もしかすると事態を永遠に秘密にしておけるかもしれない」と中野教授は言っている。

現在、国防機密だけがそのような機密種別にかけられる。もくろまれる国家安全保障会議の機能に欠くことのできない機密扱いのデータを他の省と共有することを、国防当局者に気が進まなくさせると安全保障専門家は述べる。

新法では、そのような情報にアクセスを任せるに足る人物であると認められる公務員と他の人は、リークを理由に懲役10年に上げることができた。現時点では、最高5年の懲役か、仮にデータが米軍からきたものなら10年にかけられる国防当局者を除いて、1年の禁固刑に直面する。

そのようなリークに勢いづく民間部門のジャーナリストや他の人は、もしもリークを助長するために"著しく不適切な"手段を使ったならば、5年のムショ暮らしに達する可能性があった。

http://in.reuters.com/article/2013/10/24/japan-secrecy-idINL3N0ID1S520131024

◇「戦前を取り戻す」のか 特定秘密保護法案
東京新聞 2013年10月23日

特定秘密保護法案が近く提出される。「知る権利」が条文化されても、政府は恣意的に重要情報を遮蔽する。市民活動さえ脅かす情報支配の道具と化す。
「安全保障」の言葉さえ、意図的に付けたら、どんな情報も秘密として封印されかねない。
最高10年の懲役という厳罰規定が公務員を威嚇し、一般情報も公にされにくくなろう。何が秘密かも秘密だからだ。情報の密封度は格段に高まる。あらゆる情報が閉ざされる方向に力学が働く。情報統制が復活するようなものだ。一般の国民にも無縁ではない。

・米国は機密自動解除も

秘密保護法案の問題点は、特段の秘匿を要する「特定秘密」の指定段階にもある。行政機関の「長」が担うが、その妥当性は誰もチェックできない。
有識者会議を設け、秘密指定の際に統一基準を示すという。でも、基準を示すだけで、個別案件の審査はしない。監視役が不在なのは何ら変わりがない。
永久に秘密にしうるのも問題だ。30年を超えるときは、理由を示して、内閣の承認を得る。だが、承認さえあれば、秘密はずっと秘密であり続ける。

米国ではさまざまな機会で、機密解除の定めがある。1966年には情報公開を促す「情報自由法」ができた。機密解除は10年未満に設定され、上限の25年に達すると、自動的にオープンになる。50年、75年のケースもあるが、基本的にずっと秘密にしておく方が困難だ。
大統領でも「大統領記録法」で、個人的なメールや資料、メモ類が記録され、その後は公文書管理下に置かれる。
機密指定の段階で、行政機関の「長」は常に「説明しなさい」と命令される状態に置かれる。機密指定が疑わしいと、行政内部で異議申し立てが奨励される。外部機関に通報する権利もある。

・名ばかりの「知る権利」

特定秘密の指定事項は(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動の防止(4)テロリズムの防止-の4つだ。自衛隊の情報保全隊や公安警察などがかかわるだろう。
4事項のうち、特定有害活動とは何か。条文にはスパイ活動ばかりか、「その他の活動」の言葉もある。どんな活動が含まれるのか不明で、特定有害活動の意味が不明瞭になっている。いかなる解釈もできてしまう。
テロ分野も同様である。殺傷や破壊活動のほかに、「政治上その他の主義主張に基づき、国家もしくは他人にこれを強要」する活動も含まれると解される。
これが「テロ」なら幅広すぎる。さまざまな市民活動も考えているのか。原発がテロ対象なら、反原発運動は含まれよう。まさか軍事国家化を防ぐ平和運動さえも含むのだろうか。
公安警察などが社会の幅広い分野にも触手を伸ばせるよう、法案がつくられていると疑われる。
「知る権利」が書かれても、国民に教えない特定秘密だから名ばかり規定だ。「取材の自由」も「不当な方法でない限り」と制約される。政府がひた隠す情報を探るのは容易でない。そそのかしだけで罰する法律は、従来の取材手法さえ、「不当」の烙印を押しかねない。
公務員への適性評価と呼ぶ身辺調査は、飲酒の節度や借金など細かな事項に及ぶ。親族ばかりか、省庁と契約した民間業者側も含まれる。膨大な人数にのぼる。
主義主張に絡む活動まで対象範囲だから、思想調査そのものになってしまう。警察がこれだけ情報収集し、集積するのは、極めて危険だ。国民監視同然で、プライバシー権の侵害にもあたりうる。
何しろ国会議員も最高5年の処罰対象なのだ。特定秘密を知った議員は、それが大問題であっても、国会追及できない。国権の最高機関を無視するに等しい。

根本的な問題は、官僚の情報支配が進むだけで、国民の自由や人権を損なう危うさにある。民主主義にとって大事なのは、自由な情報だ。それが遠のく。
まるで「戦前を取り戻す」ような発想がのぞいている。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013102302000123.html